- 血圧が高い状態が続く高血圧
- 高血圧の原因は?
- 高血圧の初期症状はない!?症状が起きた時には進行していることも…
- 高血圧が進行することで起こる病気
- 高血圧の検査と診断
- 高血圧の治療~食事療法と運動療法は必須~
- 高血圧の治療~食事療法と運動療法は必須~
血圧が高い状態が続く高血圧
高血圧の原因は?
高血圧は、「本態性高血圧」という原因が不明なタイプと、「二次性高血圧」という他の疾患がきっかけになり発症するタイプに分けられます。日本人は、ライフスタイルや遺伝的要素の影響によって、本態性高血圧の方が約9割を占めていると言われています。
長い時間、高血圧のままでは血管の壁がさらに厚みを増して、動脈硬化が進行してしまいます。その結果、血管が狭くなって血流が低下してしまうため、より強い力で血流を促そうとして血圧の上昇が起こることで、高血圧を発症しやすくなるのです。
遺伝によるもの
高血圧の要因の1つに遺伝が挙げられます。
両親が両方とも高血圧の場合、子どもは約5割が高血圧になるとされ、両親が1人でも高血圧なら約3割が高血圧を発症すると言われています。
遺伝的要素が原因の背景には、体質や親子で同じような食事を食べていることが高血圧の発症と関係すると考えられています。
生活習慣や食生活がきっかけ
塩分の摂りすぎ
人間の体は塩分濃度を一定に保つ仕組みになっています。塩分を多く摂取した場合、人間の体は水分量を増加させ塩分濃度を低下させようと働くため、血液の量が増えて血圧上昇に繋がります。
また、カリウムが豊富な野菜や果物が不足しても高血圧の原因となります。体内で多くなり過ぎたナトリウムという物質がカリウムの働きにより、腎臓から排出されます。カリウムが足りない状態だと、ナトリウムをうまく排出することが難しくなり、血液に含まれる塩分が増えて血圧が上がってしまいます。
運動不足
運動習慣がないと、体の血流が低下して血圧が上昇します。仕事などで座りっぱなしの方は、血圧が高くなるリスクが高いため注意が必要です。
肥満
脂肪細胞は、血圧の上昇や動脈硬化を促す物質を生成します。さらに、インスリンの働きを低下させて血中濃度が上昇し、交感神経が働いて血管を狭めてしまいます。メタボリックシンドロームである内臓脂肪型肥満の方は、特に気を付けなければいけません。肥満で体重が増加すると血液の量も増加してしまい、心臓にも大きな負担がかかります。
過度なストレス
過度なストレスを感じることで、交感神経が活発化します。その結果、心臓が収縮して心拍数が増え、血液量の増加や血管の収縮に繋がります。
お酒の飲み過ぎ
常にお酒を飲み過ぎていると血圧が高くなりやすく、中性脂肪が増加して動脈硬化のリスクも高まります。飲酒によってストレス発散できて、血圧も下降するとお考えになる方もいるかもしれませんが、飲み過ぎると体に良くありませんので飲む量に注意しましょう。
タバコ
タバコに含まれるニコチンが交感神経を活発化させ、血圧を上昇させる物質の分泌を促し、血管の収縮が起こります。さらに活性酸素が大量に産生されて、動脈硬化を引き起こします。
高血圧の初期症状はない!?症状が起きた時には進行していることも…
高血圧は初期の場合、動脈硬化も進んでなければ目立つ症状は現れません。そのため、発症に気付けないケースもありますので、血圧を定期的に確認することが大切になります。
症状を感じ始めたら、高血圧は悪化している恐れもあります。
高血圧の症状は、日本臨床内科医会で下記のように示されています。
- めまい
- 頭痛
- 肩こり
高血圧以外の病気でも起こり得る症状ばかりで、驚いた方も多いかもしれません。
高血圧が進行することで起こる病気
通常の状態なら、血管の壁には弾力があります。しかし、長い間血圧が高いままだと、常に血管は強張っている状態なので、血管の壁に厚みと硬さが出てきます。高血圧は動脈硬化を進行させるので、大血管や小血管の壁も厚みと硬さが出てきて、脳梗塞、脳出血、大動脈瘤、心筋梗塞、腎硬化症、眼底出血といった様々な疾患を引き起こします。さらに、血液の量を増やそうと心臓も頑張るため、心臓肥大や心不全を発症する可能性もあります。このような危険な状態を避けるには、高血圧を予防することが大切です。血圧が高い方は、血圧が基準値に収まるようにコントロールしましょう。
高血圧の検査と診断
上腕部に「カフカ」を巻きつけて血圧を測定する方法が多く採用されています。椅子に座ってリラックスしたら、心臓の高さと上腕を同じ高さにして血圧を何回か測定し、その平均値を調べて、高血圧かどうかを調べます。
診断の基準
高血圧は、下記のように数値によって軽症から重度まで3段階に分類されます。
- 最高血圧140-159mmHg/最低血圧90-99mmHg:軽症高血圧
- 最高血圧160-179mmHg/最低血圧100-109mmHg:中等高血圧
- 最高血圧180mmHg以上/最低血圧110mmHg以上:重度高血圧
重度に近いほど、日常生活にも影響が及ぶ可能性が高くなります。重度の高血圧になると、心不全や脳出血など命に関わる疾患を発症するリスクが高くなるので注意が必要です。
高血圧の治療~食事療法と運動療法は必須~
高血圧の治療は、「生活習慣の見直し」と「薬物療法」の2つを行っていきます。
はじめに生活習慣の見直しについて、下記で1つずつ詳しく説明していきます。
正しい生活習慣を目指すことは、高血圧の治療以外にも、心臓病、脳梗塞、糖尿病といった様々な病気を改善させるためにも有効なので、覚えておくと今後も役立つはずです。これからの人生も健康に生きていくために、以下でご紹介することを是非試してみてください。
生活習慣の是正
摂取する塩分の管理
昔の日本人は、塩分摂取量が20gという多さで、脳卒中を発症する方も今より10倍多くいました。そのため、国が減塩に力を入れるようになり、昭和62年頃には11.7gまで減少したのですが、近年ハンバーガー、インスタントラーメン、ファーストフードの普及により、また塩分摂取が多くなってきていると言われています。
1日の塩分は7g程度に抑えることが目安になります。食べ物には約3gの塩分が含まれており、調味料で塩や醤油を使用する場合は4g程に抑える必要があります。摂取する塩分を抑えることで、カロリーも軽減できるため、肥満の解消にも繋がります。
体重のコントロール
標準体重は22×身長(m)の2乗の計算式で出すことができます。多くの研究の結果、22が病気を発症する可能性が低いと判明したため、計算式に22が使用されています。肥満は標準体重を20%超えた状態ですが、標準体重の数値に収まっていても脂肪が蓄積した部位によって病気を発症するリスクが高いケースもあります。そのため、例えば内臓脂肪が多くなると、運動や食事内容の改善が必要になるので、基準値内に収まっているから問題ないとは限りません。
またBMI(Body Mass Index)という体重と身長から計算する方法も利用されることが多いです。
BMI=体重(Kg)÷身長(m)×2乗
BMIの場合、22が標準値となり、25以上になると生活習慣病を発症するリスクがかなり高くなるので注意が必要です。肥満の方は体重を4㎏減らすと、その分血圧も下がって効果を感じられると言われています。
継続できる軽い運動
運動不足の方は運動をする方に比べ、血圧は高めです。また、血圧を下げるために運動療法は有効と報告されており、筋肉トレーニングをはじめとする「静的な運動」より、「動的運動」である水泳、ウォーキング、ランニングが効果を得やすいと言われています。また、動きの激しい運動も、血圧が急上昇してしまい、思わぬ事故が起こる可能性も少なくありません。無理なく続けられる軽めの運動を習慣化することが大切と言えます。
タバコ
タバコと血圧は直接関わり合っているわけではないですが、動脈硬化を悪化させる恐れが最も高いのがタバコです。血圧を上昇させないようにするのは動脈硬化の予防に繋がりますが、タバコを吸いながら血圧の管理を行っても効果は得られません。
また、精神的にストレスを感じやすいと、動脈硬化の進行とも関係してくると言われていますので、ストレスは溜めずに発散しましょう。ただし、精神的なストレスと血圧との明確な関係性は分かっておりません。
その他、血圧の上昇に繋がるのが寒さや冷たさです。血圧が高い方は、冬の寒い時期の気温の変動は良くないとされているので、例えば、暖かいリビングからトイレやお風呂に向かう際の気温の変化に気を付けなければいけません。
飲酒
アルコールと心臓や血管の疾患と関係性についてご説明します。
アルコールの摂取は心臓疾患を防ぐ効果が期待できるとされていますが、アルコールを過剰に摂取すると、脳卒中になるリスクは高いとも言われています。一時的ですが、アルコールの摂取1回で血圧も下降します。ただし、飲み過ぎると血圧が上昇して血管の病気を発症するリスクが高まります。また、アルコールを過剰に摂取すると、食生活の乱れに繋がり、体重の管理ができず、血圧が上昇する可能性もあります。日本酒で1合、ビールは500㏄以下を目安に飲む量をコントロールしましょう。
薬物療法
高血圧を薬物療法で治療する時に、下記のような4種類のお薬を使用します。
利尿剤:尿の量を増やして血液の量を減らす
血管拡張薬:血管を広げる効果がある
神経遮断薬:心臓にかかる負担を抑制して、血管の緊張を和らげる
レニン・アンギオテンシン系薬:昇圧ホルモンを抑制し、利尿作用や血管を拡大する作用がある
上記の4つのお薬には、メリット・デメリットがありますので、患者様の状態に合わせて適切にお薬を使用していきます。
高血圧にリスクになるからとコーヒーは飲まない方が良い?飲んでも良い?
近年の研究によってコーヒーと血圧との関係性が明らかになりました。1日3~6杯のコーヒーを飲み続けた人とコーヒーを飲まない人では、習慣的にコーヒーを飲む人の方が高血圧になる可能性が低いことが分かったそうです。コーヒーにはコーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)という抗酸化作用がある成分が含まれており、酸化ストレスでダメージを受けた血管の壁を回復させ、血圧を下げる働きが見込まれます。以前は、コーヒーに含まれるカフェインにより、血中のアドレナリン濃度が高くなるため、血圧が急上昇しやすいと言われていましたが、これは短い時間で収まるのでコーヒーを飲み続けることが高血圧を発症させるわけではありません。
1日3杯程を目安にして、カフェインの過剰摂取に注意しながらコーヒーを飲む習慣を身に付けましょう。肥満気味の方は砂糖やミルクの入れ過ぎにも注意する必要があります。