ヘリコバクター・ピロリ菌はうつる可能性が!?感染原因について解説
ピロリ菌は、大人から子どもへの食べ物の口移しやキスなどで感染するとされています。
大人から大人には感染することはなく、6歳未満の免疫力がまだ低い子どもに感染することが多いと言われています。ピロリ菌に感染する原因は、ピロリ菌を持つ親から子どもへのキスや口移しがほとんどと考えられています。
一昔前、衛生状態の悪い井戸水を飲んでピロリ菌に感染する人が多くいた頃もあったようですが、水道の設備も整えられた現代ではそのようなことは減少しました。
大人と大人のキスや食べ物の分け合いでピロリ菌が移らないのは、子どもに比べて大人の免疫力は高いのが理由です。もし体内にピロリ菌が侵入しても、免疫細胞によって体が守られると言われています。
ピロリ菌感染の症状チェック
- 半年以上、胃に不調を感じている
- 胃・十二指腸潰瘍や胃炎になりやすい
- 家族にピロリ菌に感染した人がいる
- お薬を服用するが短い時間で効果は切れる
- 1970年より前に生まれた、もしくは40歳前後の方
- 健診の胃のバリウム検査で異常ありと言われた
- 衛生状態が悪いところに住んでいたことがある
ピロリ菌が引き起こす病気
ピロリ菌感染により、上記の病気を引き起こす恐れがあります。
ピロリ菌が胃に生息すると胃粘膜が荒れやすくなり、胃炎が長く続きます。さらに食生活の乱れやストレスなどが引き金になって、胃がんをはじめとする様々な病気を引き起こすのです。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌感染の有無を調べるには、下記のように胃カメラを使用する方法と胃カメラを使用しない方法があります。
胃カメラを使用するピロリ菌検査
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が出すウレアーゼという物質が尿素を分解する働きを調べるのが迅速ウレアーゼ試験です。
ピロリ菌は、ウレアーゼと呼ばれる酵素を産生して胃液中の尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解するウレアーゼ活性を行っているため、強い胃酸がある胃の中でも生き続けられます。
ピロリ菌感染は、胃カメラ検査で胃の粘膜を採取し、尿素とpH指示薬の入った反応液に入れることで判明します。ピロリ菌がいた場合、pHがアルカリ側に反応してアンモニアがあることを知らせてくれます。迅速ウレアーゼ試験は、ピロリ菌感染を容易に検査できて結果も検査した当日に判明するので、除菌治療も早期に始めることができます。
鏡検法(きょうけんほう)
鏡検法は、胃カメラで採取した胃粘膜の組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を調べる方法です。
培養法(ばいようほう)
培養法は胃粘膜を胃カメラで採取し、胃粘膜を培養してピロリ菌が増えやすい状態にして感染の有無を調べる検査です。5~7日程培養する時間を要するので手間もかかり、近年ではあまり実施されておりません。
胃カメラを使用しないピロリ菌検査
抗ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査
抗ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査は、採血で血液中の抗体を測定する方法です。
ピロリ菌が体内にいる場合、細菌感染したような状態のため、人間の体はウイルスや細菌を排除しようと抗体を作り出す仕組みになっており、ピロリ菌感染した人の体内ではピロリ菌抗体が増殖しています。
しかし、抗ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査は、ピロリ菌に現在感染しているのか、前に感染していたのか(除菌治療を行った)が分からないのが難点です。ごく稀に、歯の治療の際に処方してもらった抗生剤を服用して運よくピロリ菌が除菌できた方もいるようです。
ピロリ菌に感染したことがあれば、その人の体内ではピロリ菌抗体が作られています。除菌治療が済んでもピロリ菌抗体は体の中に潜んでおり、抗体の量は1年以上かけて減少していく場合もあります。
このように、ピロリ菌感染を調べるには抗ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査のみだと難しいと言えます。
便中ピロリ抗原検査
便中ピロリ抗原検査は、便を少量採取してピロリ菌の抗原を調べる方法です。今、ピロリ菌に感染しているのかを確認するため、抗原の確認はとても重要です。ただし、便を採取する手間を考え、便中ピロリ抗原検査をあまり行わない病院もあります。
尿素呼気検査
尿素呼気検査は、ピロリ菌によるウレアーゼ活性を利用して検査します。ピロリ菌が尿素を分解して作られた二酸化炭素は、血液に流されて肺に移り、外部に出されるので、その仕組みも活用します。
事前に目印を付けた13C-尿素を含むタブレットを服用してから検査に臨んで頂きます。タブレット型の検査薬を服用する前に二酸化炭素を測るために専用パックに息を吹き込んでもらいます。タブレットを服用したら20分程安静に過ごしてい頂き、再度専用パックに息を吹き込んでもらって測定します。
胃にピロリ菌が生息していると、二酸化炭素が増加してその中には目印を付けた炭素も含まれています。タブレットを服用する前と後で二酸化炭素の量がどう変わったかでピロリ菌感染が判明します。尿素呼気検査はこのように容易に行える検査で、高精度なのもメリットのため、除菌治療の際に除菌が成功したかを確認するのに有効です。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌感染している場合、除菌治療を受ける必要があります。
胃酸の分泌を抑制するお薬の1種類、抗菌薬の2種類の計3つのお薬を1日2回、7日間服用して頂き、除菌していきます。服用期間が終わって約8週間後、体内にいたピロリ菌が除菌できたかどうかを判定するための検査を行います。
除菌治療(一次除菌)の1回目は成功率が90%程と言われており、もし1回で除菌できなくても除菌治療の2回目が受けられます。ここまで保険を使用して治療することができます。
除菌治療の1回目と2回目を合わせた成功率は98%程まで上がると言われています。
一次除菌
胃酸の分泌を抑えるお薬を1種類、抗菌薬を2種類で合計3錠を1日2回、7日間飲み続けてもらいます。飲み終わって8週間経ったら、再度ピロリ菌感染の有無を検査して除菌できたかをチェックします。
二次除菌
2種類飲んでいた抗菌薬のどちらかを今までと異なるお薬に変えて、1回目と同様に飲み続けてもらいます。飲み終わって8週間経ったら、ピロリ菌感染の有無を調べて除菌できたかをチェックします。2回目もピロリ菌を除菌できなかった場合、3回目の除菌治療を受けられますが、ここから保険は適用されないので費用が発生するのをご理解ください。
ピロリ菌は自然治癒しない?
ピロリ菌感染を起こすと自然に治ることはないため、除菌治療が必要になります。
一度ピロリ菌感染の有無を調べ、感染が判明したら除菌治療を受けるようにしましょう。