- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
- 潰瘍性大腸炎の原因
- 潰瘍性大腸炎の症状
- 潰瘍性大腸炎の検査と診断
- 潰瘍性大腸炎の治療
- クローン病の原因
- クローン病の症状
- クローン病の検査と診断
- クローン病の治療
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
潰瘍性大腸炎とクローン病をまとめて「炎症性腸疾患」と言い、免疫機能に異常が生じることで発症するとされています。明確な原因は解明されていないので、国から難病に指定されている病気です。両方とも長期間消化管に炎症が起き、「活動期」という症状がある時期と「寛解期」という症状が落ち着き時期を繰り返すことが分かっています。
潰瘍性大腸炎の場合、大腸粘膜に炎症が生じてびらんができます。一方、クローン病の場合、全身にある消化器に炎症が起こるリスクが高く、深い部位にまで炎症が拡大する恐れがあるため、低栄養状態になる傾向があります。しっかり栄養を摂ることが大切になるので、正しく病気を見極めて診断することが非常に重要です。
炎症性腸疾患は、若い世代やご高齢の方まで様々な世代の方が発症する病気です。炎症を落ち着かせて根気よく治療を続けていけば、通常に近い状態で日常生活を過ごすことができます。しかし、症状が落ち着いたからといって治療をやめると再発する恐れがあるので、定期的に病院で治療を継続するようにしましょう。
潰瘍性大腸炎の原因
未だに発症する原因は不明です。
食事内容や腸内環境などの影響で体の免疫機能が低下し、自分の体を攻撃してしまう自己免疫反応が関係すると言われています。
潰瘍性大腸炎になるのはどんな人?
若い世代やご高齢の方にも発症する方はいらっしゃいます。その中でも女性は25~29歳、男性は20~24歳の方が多く発症する傾向にあります。ただし、近年では40歳以上の方も発症するリスクは高いとされています。患者様全体では、軽症~中等症の方が9割を占め、症状が重篤になるケースはごく稀です。
潰瘍性大腸炎になりやすい性格
潰瘍性大腸炎を発症しやすいのは、ストレスを感じやすい方、仕事や日常生活において心配性な方、真面目な性格の方とされています。ただし、科学的に証明された訳ではありません。
ストレスは誰しも感じる場面はあるので、発症するリスクは誰にでもあると言えます。また、遺伝が発症に関係することも分かっています。
潰瘍性大腸炎の症状
- 腹痛
- 体重減少
- 便通異常(粘血便、血便、下痢)
- 下腹部の違和感
- 貧血
- 発熱 など
上記の症状が現れたり治まったりを繰り返していくので、症状がなくなっても治療をやめないようにしましょう。
潰瘍性大腸炎の検査と診断
潰瘍性大腸炎は、内視鏡検査(大腸カメラ検査)、血液検査、腹部エコー検査、腹部レントゲン検査、便培養などを行って診断します。中でも大腸カメラ検査は、正しい診断をするために必要不可欠です。
内視鏡を肛門から入れて大腸粘膜を目で見てチェックできるので、どの程度炎症があるのかを確認することができます。また、粘膜を採取して病理組織検査を行う場合もあります。
潰瘍性大腸炎の治療
発症原因は不明のため、治癒は難しいのが現状です。ただし、炎症を落ち着かせ良い状態のまま維持し続けることはできます。寛解期が訪れて症状が消失しても根気よく治療を継続すれば、日常生活にもほぼ支障をきたすことはありませんので、検査を受けて自分の体の状態を把握し、治療を続けるようにしましょう。
稀なケースにはなりますが、潰瘍ができて穿孔や出血が多い場合や、過剰なガスが腸に溜まる巨大結腸症を発症している場合、大腸がんなどが疑われる場合、炎症が酷くてステロイドの使用が難しい場合などは、外科治療を検討する可能性があります。
大腸自体を摘出する手術になる場合もありますので、日常生活に支障をきたさないためにも、肛門の機能を失わないように手術する必要があります。当院は、そのような患者様に対してはより設備の整った医療機関をご紹介し、そちらで治療を受けて頂いております。
クローン病の原因
クローン病の原因も未だに解明されておらず、詳しいことは不明です。ただし、自分の免疫機能に異常が起きることが関係していると言われています。また、遺伝的要素、細菌・ウイルス感染、食生活、病原体への感染などの影響もあると考えられています。
クローン病になるのはどんな人?
主に10~20歳代の若い世代が多く発症しており、特に男性は20~24歳、女性は15~19歳の方に多い傾向があります。男女比は2対1で男性の方が多く発症することが分かっています。
世界全体では、北米やヨーロッパといった先進国で患者様が多くいます。衛生面が整っていたり、タンパク質や動物性脂肪をよく食べる食生活だったりすることが、クローン病の発症と深く関係すると言われています。また、タバコを吸わない人より、吸う人の方がクローン病のリスクが高いことが分かっています。
クローン病の症状
- 血便
- 腹痛
- 貧血
- 発熱
- 下痢
- 全身の倦怠感
- 腹部の腫瘤
- 体重減少 など
血便、下痢、腹痛が代表的な症状です。さらに症状が進むと、貧血、全身の倦怠感、体重減少、腹部の腫瘤といった症状が現れます。
合併症が生じると、腸閉塞、腸に穴が開く瘻孔(ろうこう)、膿瘍、虹彩炎、関節炎、肛門部病変、結節性紅斑など様々な症状を引き起こし、それぞれ異なる症状が現れます。
クローン病の検査と診断
問診で詳しい症状をお伺いした上で血液検査を行います。その結果、貧血などがありクローン病の可能性がある場合は、画像で調べることができる大腸カメラ検査などを行います。検査で病変の有無を調べ、発見したらクローン病となります。
当院でも大腸カメラ検査を実施しております。豊富な知識や経験を持つ専門医による高精度な大腸カメラ検査で、正しい診断に繋げていきますのでご安心ください。
クローン病の治療
クローン病は、完治させることは難しい病気です。そのため、栄養療法、外科治療、薬物療法などを行い、症状を落ち着かせることを目標にしていきます。
薬物療法
症状を落ち着かせるには、5-アミノサリチル酸製剤、副腎皮質ステロイド、免疫調節薬といったお薬が有効です。5-アミノサリチル酸製剤と免疫調節薬は、症状が落ち着いた後もぶり返しを防ぐために服用を継続して頂く必要があります。
栄養療法
合併症(経腸や腸閉塞など)で栄養状態が悪い場合、静脈から栄養を補い、症状を改善させます。
外科治療
外科治療は、瘻孔、膿瘍、腸閉塞といった合併症を引き起こしている際に行うことがあります。内視鏡を使用すれば、腸閉塞の治療ができます。
瘻孔(ろうこう)
肛門の内側で病変が生じ、腸管から腸管、腸管から皮膚などが繋がるトンネルのような穴を瘻孔と言います。
膿瘍(のうよう)
化膿して膿が溜まった状態が膿瘍です。原因の一つに瘻孔が挙げられます。
腸閉塞
腸管が癒着したり、狭窄したりすることで内容物が腸内で詰まってしまう病気です。狭くなった部位を内視鏡で広げて治療することができます。